6/13追記:訳語を一部変更しました。
conversational media:対話メディア→カンバセーショナルメディア
conversation:対話→会話
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前回からの続き。conversationalを「対話」と訳すか、「会話」と訳すかがまだ分からない。その他、grammar、voiceの訳がまだしっくりこないので、後で変えるかもしれません。
<-----------ここから訳文------------------>
その典型がBoing
Boingだ。
Boing Boingの運営にはさまざまな人たちが参加している。彼らは雑誌の編集、SFやその他の書籍・記事の執筆、先進的な企業のコンサルティング、世界各地の最新事情のレポートといった仕事に従事し、概して非常に魅力的な人生を送っている。この10年間は主にインターネット上で活動し、Boing Boingをウェブで最もリンクされ、最も影響力を持つブログのひとつに育てあげた。
2004年初頭、私はBoing Boingのメンバーからある相談を持ちかけられた(仕事やプライベートを通して、彼らとはつきあいがあった)。何年もの間、彼らはBoing
Boingに記事を投稿し、ボランティアベースでサイトの運営に貢献していた。Boing
Boingはさまざまな形でメンバーの労に報いた――たとえば、メンバーの創造性を育み、エゴを満たし、とっておきのアイディアやプロジェクト、不満の種を話し合う場を提供した。しかし、金銭的な報酬はゼロだった。2004年初頭には、サイトのホスティング費用は急カーブを描いて増え始めていた。私が相談を受けた月のホスティング費用は500ドルで、このまま行けば半年後には1500ドルになるはずだった。助けてくれないか、と彼らは懇願した。サイトの経費をカバーし、そして願わくはBoing
Boingを主たる収入源にできるようなビジネスモデルはないだろうか? そうすれば、Boing
Boingの仕事にもっと多くの時間を割くことができる。
最初に私の口をついて出たのは、次のような言葉だった。「月に500ドルだって? 動画でも投稿しているのか?!」。私はBoing
Boingにどれだけのアクセスがあるのかを知らなかったが、それが何人であれ、月に500ドルものホスティング費用が必要になるとは思えなかった。なにしろ、当時のSearchblogのオーディエンスは約5万人で、私のホスティング費用は月50ドル程度にすぎなかったからだ。Boing BoingのオーディエンスがSearchblogの10倍に達しているとは思えなかった。一体全体、君らのサイトには毎月、どれくらいのアクセスがあるんだと私は尋ねた。
50万人――彼らの答えを聞いて、私は仰天した。
50万人だって? Boing Boingでは50万人が会話に参加しているって? なんてこった! Wiredは50万人の購読者を獲得するために数千万ドルを費やしたというのに(もちろん、Wiredの読者は定期購読料を払うことで、もっと大きな価値も生み出したのだが)。それにしても、だ! 約1000万ドルをかけて構築したTheStandard.com は、月に50万人の読者を獲得するのがやっとだった――しかも、サービスは無料だったのに!
メディアビジネスの世界で何かが起きていることは間違いなかった。人々はBoing
Boingのような会話型のサイトを(もちろん検索を通して!)見つけ、お気に入りに加えるようになっていた。では、マーケターはどうだろう。マーケターも、こうした会話に参加したいと思っているのだろうか?
Boing Boingのメンバーはマーケティングに完全に背を向けているわけではなかったが、非常に懐疑的だった。サイトに広告を掲載したら読者が反発するのではないか? Boing
Boingの文法や考えを理解してくれる広告を見つけることができるのか? punch-the-monkeyタイプのクリエイティブやエクスパンドバナーといった当時のウェブにはびこっていた広告を禁止しても、利益を生むことができるのか?
一番いいのは読者の意見を聞くことだ。われわれはアンケートを実施し、読者の意見を求めることにした。すると圧倒的多数の読者が、Boing
Boingの運営や発展に役立つなら、サイトに広告が掲載されてもかまわないと答えた。しかし、広告のあり方に関する意見も山のように寄せられた。こうした意見は広告に対する編集者たちの感覚が、おおむね正しいことを証明した--つまり、適切な企業のメッセージを、適切な方法とトーンで伝えることができれば、Boing
Boingへの広告掲載はうまくいくということだ。
Boing
Boingのような大規模なブログに広告が掲載されることは、現在では当たり前のことだと思われている。しかし、3年前はそうではなかった。われわれは手探りで新しいことに挑戦した。私はBoing
Boingの編集者たちに、Boing
Boingの考えに「フィット」する企業をいくつか挙げてほしいと頼んだ。彼らは4社の名前を挙げた――Apple、Google、O'Reilly Media、そしてWiredだ。私は4社すべてに連絡を取り、3カ月間Boing Boingの「スポンサー」にならないかと持ちかけた。4社のうちの3社が合意した(Appleは拒否したが、後に参加した)。一月後、Boing
Boingは経費を払うことができるようになっただけでなく、いくらかの利益も手にするようになっていた。こうした利益のおかげで、編集者たちは「経費を払う」ためにやっていた仕事を減らし、Boing
Boing関連の作業に集中することができるようになった。
(ブログの)著者に、自分のサイトに広告を出す企業の承認権を与えるのは当然のことだと思うかもしれない。しかし、従来のメディアではこうしたことは行われていない。これは画期的なことなのだ。自分のサイトへの出稿を許すということは、広告主を自分のサイトでの会話に招くことに等しい。そこには許可と信頼関係がある。現在、FMが販売している広告はすべて、事前に各ブログの著者の承認を得てから掲載されている。当初は著者の承認が得られないのではないかという懸念があったが、結果的には会話が生まれ、新しい形のオンラインマーケティングが次々と生まれることになった。
カンバセーショナルマーケティングの最初の例として、某巨大コンピュータブランドの例を紹介しよう。この場で名前を出すことを先方が望んでいるかどうか分からないので、ブランド名は伏せておく。ともかく、このブランドは問題を抱えていた――顧客は自分たちのお気に入りのブランドが、これからも革新的で先端的な存在であり続けることができるのか自信を持てなくなっていた。経営に対する不安もあった。ブランドは自分たちが今も革新的な存在であることを、テクノロジー業界で影響力を持つ人々(ここにはブログなどのカンバセーショナルメディアサイトの読者も含まれる)に納得させる必要があった。そのためにはどうすればいいのか?
われわれが提案したやり方は、ややリスクのあるものだった。製品の次期バージョンに期待するものを顧客に聞いてみてはどうかと持ちかけたのだ。顧客がクールな新機能を提案し、気に入らない点にグチをこぼし、そのブランドの製品全般に関する会話に参加することのできるサイトを作り、広告を使って、このサイトに顧客を誘導する。そこで得られたアイディアは、できる限り新製品に反映する。そうすれば、「群衆の力」と「参加のアーキテクチャ」に支えられたハードウェアを生み出すことができるだろう!
代理店はこのアイディアを気に入ったが、ブランドはおよび腰だった。サイトでの会話が不愉快な方向に向かったらどうするのか? サイトに荒らしが押し寄せ、手当たり次第に難癖をつけ始めたらどうするのか? ブランドはサイト上の会話の安全性に確信が持てなかったので、大きな一歩を踏み出すことはなかった。それでも、新しいことには挑戦した。開発中のハードウェアの特定の機能に関して、読者に投票を呼びかけるキャンペーンを実施したのだ。これは初の試みだったが、説得力のある結果が得られた。投票に参加するために、20万以上の人が複雑に構築されたマーケティングサイトを進んでいったのである。
<-----------訳文ここまで------------------>
Dice、Symantec、Ciscoの事例に続く…
原文:Conversational Marketing: PGM v. CM, Part 3 (from Searchblog, by John Battelle)